私がバードウォッチングを本格的に始めたのは岩手県盛岡市に住んでいた時でした。1年間に300日くらい同じフィールドに通いました。
そこで気づいたことがありました。暴風雨や大雪など天候が大きく変化した後、いつもと違う野鳥と出会えるということです。
八丈島は、夏こそ青い空、青い海ですが、年間3,000 mmの降水量の雨の多い土地で場合によっては暴風雨の日もよくあります。
その翌日、経験的にいつもと違う野鳥と出会えることを知っていました。
台風22号の通過後の八丈島は被災下でした。私も翌日に野鳥を見るなどの余裕もなく、回復の毎日でした。
動けるようになったのは10月末。そこには信じられない出会いがありました。
今日は、「2025年秋、東京都八丈島で籾山徳太郎先生が記録した野鳥と出会いました」と題してのお話です。
籾山徳太郎先生について
私は元研究者です。専門は節足動物の分子生物学、生化学、生理学、化学生態学、免疫組織化学、構造生物学などの生物学です。
昔から野鳥写真を撮影していますが、鳥類学の専門家ではありません。
恥ずかしながら、籾山徳太郎先生のお名前も知りませんでした。
ネットで検索しますと、籾山徳太郎先生は1885年生まれ1962年に亡くなられています。そして、鳥学研究者、日本鳥学会会員という情報が見つかりました。
籾山徳太郎先生は、八丈島で野鳥の研究をされていた方です。籾山徳太郎先生は1922年5月~1925年11月まで八丈島に滞在し、貴重な野鳥の記録を残されました。
また、それ以降も精力的に活動され、1928年、1930年に八丈島でズグロチャキンチョウを報告され、それらが日本で初めての記録となりました(籾山, 1932)。
そのズグロチャキンチョウは、その後1984年4月〜1986年3月の間(高木ら, 1986)、それ以降も何度か記録され、私も2024年に撮影しました。
そして、2025年秋、籾山徳太郎先生の記録を再び見ることになりました。
今まで見たことのない野鳥との出会い
八丈島にはホオジロの仲間がいます。
ホオジロは留鳥ですし、オオジュリンは渡り鳥で、カシラダカやミヤマホオジロは冬鳥として渡ってきます。上述のズグロチャキンチョウは迷鳥です。
見たことのない野鳥と出会いました。この野鳥は地面に降りてイネ科植物の種をひたすら食べていました。
後ろ姿はヒバリと全く違うので、ホオジロの仲間だと思いました。しかし、上述のホオジロ、カシラダカ、ミヤマホオジロ、オオジュリンとは似ておらず、当然、迷鳥のズグロチャキンチョウであるはずがありません。
自分にも自信がありません。とりあえず、可能な限り撮影をしました。
家に帰って写真と図鑑を見比べますと、オオジュリンでもコジュリンでもありませんでした。
ネットでも検索しました。そうしますと、特徴が一致した野鳥が出てきました。

シラガホオジロでした
「八丈島」「シラガホオジロ」のワードの組み合わせも検索しました。そうしますと、籾山徳太郎先生著の論文が出てきました。論文内には、1922年5月~1925年11月の八丈島の滞在期間中にシラガホオジロを記録した記載がありました。
籾山徳太郎 (1932) 日本産鳥類の新産地報告一束. 鳥, 7, 301-328.
また、シラガホオジロは、1984年4月〜1986年3月に継続して観察した調査でも記録されました。
高木真一、伊藤正道、高木由美子、伊藤薫 (1986) 八丈島の鳥類2年間の記録. Strix, 5, 74-79.

EOS 7D Mark II+EF600mm F4L IS II USM+EXTENDER EF1.4xIII
初めてみたスズメの仲間
そして、もう1種ありました。
スズメは、八丈島でも一般的な野鳥です。八丈島で繁殖しますし、行動を観察してきた経験から、もしかしましたら島外から来ている可能性もあります。
電線を見ましたら、スズメの群れが止まっていました。
いつもの光景です。ところが、一回り小さい個体が何羽か混じっていました。

何?
これ・・・
双眼鏡で観察しますと私の知らない模様の野鳥でした。逆光だったこともあり、「知らない野鳥」は良く分からないままでした。
そのスズメの群れが降りてきて、その「知らない野鳥」も一緒に降りてきました。
オスと思われる個体とメスと思われる個体がいました。
そして、運良く順光の位置でスズメと一緒に枝に止まりました。
ここまでくれば、見たことのない野鳥でも判別できました。

ニュウナイスズメでした
私はバードウォッチング歴間もなく40年になりますが、初めてニュウナイスズメを見ました。
八丈島に来て9年目で初めてニュウナイスズメを見ました。どのくらい珍しいのか、念のため、「八丈島」「ニュウナイスズメ」のワードの組み合わせもネットで検索しました。
そうしますと、籾山徳太郎先生の別の論文が出てきました。
籾山徳太郎 (1926) 伊豆八丈島の鳥類に就て. 動物学雑誌, 38, 347-351.

EOS 7D Mark II+EF600mm F4L IS II USM+EXTENDER EF1.4xIII
八丈島でシラガホオジロは40年ぶり、ニュウナイスズメは100年ぶりの記録?
ネットでの検索ですので、もしかしましたら違うかも知れませんが、シラガホオジロは40年ぶり、ニュウナイスズメは100年ぶりの記録となるようです。

ここでは、仮にこれらが正しいとして考えて・・・
みなさんも想像がつくと思いますが、シラガホオジロとニュウナイスズメは、私は台風22号が絡んでいるのではと思っています。
台風22号の勢力は尋常ではありませんでした。八丈島の歴史でも、今回ほど地形を変えた台風は無かったのではないでしょうか?
n数が少なくて根拠は乏しいのですが、野鳥を物差しにしますと、台風22号は八丈島にとって40年に1度あるいは100年に1度クラスだったのではないかと推察されました。

今日は、「2025年秋、東京都八丈島で籾山徳太郎先生が記録した野鳥と出会いました」と題してのお話でした。
八丈島で野鳥を研究されていました籾山徳太郎先生の紹介、シラガホオジロとニュウナイスズメのそれぞれ40年ぶりと100年ぶりの記録(正しければ)、野鳥を物差しにすると台風22号は40年あるいは100年に1度クラスだったのではないかの推察のお話でした。
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