最近、小さな黒いアリが家や建物に入ってきますね。その気合いの入れ方は、翌日が雨の日であるほど顕著です。
今日は、「家や建物へ入ってくる小さな黒いアリの駆除あるいは退治について相談されました」と題してのお話です。
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どうにかなりませんか?
と八丈島のある方から相談されました。引退はしましたが、私はそれなりの数の論文を出してきた化学生態学分野の研究者でした。私のいくつかの専門分野の中の1つです。
アリはアシジロヒラフシアリでした。以前のブログでも書きましたが、アシジロヒラフシアリの巣は地上です。
アリは生き物なので水は必要ですが、それがあれば、別に人が住んでいるところに来る必要はありません。
でも、八丈島の野外ではときおり豪雨が起きます。直撃すればアリも溺死してしまいます。
アリはどのように豪雨を予想しているかといいますと、触角にある湿度センサー(hygrosensor)を使っています。
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その湿度情報を基に、少し高台で、加えて水が常時手に入る場所へ移動しています
とアリはいっていますね。つまり、その条件に合うのが、私たち人の住む建物や家なのです。
ただし、八丈島の大部分のアリは森やビロウ畑に住んでいます。繰り返しになりますが、人の住むところに来る必要は初めからありません。
では駆除作戦開始です。
場所はここ。
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写真だけではよくわかりませんね。アリの通過している場所を赤い矢印で示します。
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アリは側溝を伝って建物に入ってきていました。
建物の壁を拡大してみます。
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よ~く見ると脚の先端が白いですね。アシジロヒラフシアリの形態的特徴です。
以前のブログで、アリはお尻の先端から道しるべフェロモンを出すことを紹介しました。アリの動きと推定される道しるべフェロモンの場所を重ねるとこんな感じになります。
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ここまで観察すれば、あとはアリが来ないようにするだけです。
少量のいらなくなった洗剤を大量の水で希釈したものを用意しました。洗剤はちょっとしか入っていません。
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アリの通り道をスプレーします。
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目的は、通過するアリの頭数を減らすことです。そうすることで、道しるべフェロモンの分泌量を減らし、最終的にはアリは来なくなります。
そのあとはこうなりました。
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アリは建物の方へ曲がらずに、側溝をまっすぐ進んでいきました。様子を見ていると、アリはゴールから大幅にずれているのに、自分がどこを歩いているのか分かっていないみたいです。
上記のスプレー後に、1日1回は建物の周辺を見回りし、アリを発見したら駄目押しでスプレーするのをお勧めします。毎日続けるとアリは来なくなります。
この対策後、今のところ、頼まれた方のところでは、アリは入ってきていません。アリでお困りの方は、簡単ですのでぜひ試してみてください。
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