私がガイドをしている場所は、登山と都市公園の中間みたいな場所です
簡単な場所ですね
まあ、登山に慣れている方でしたら、その通りですね
それでは、八丈島の山はどのようなものがあるでしょうか?八丈島には、標高854 mの八丈富士、標高701 mの三原山があります。
お客様からよく、
八丈富士と三原山は、高尾山よりもちょっと高い山ですよね
というコメントを聞きます。
確かに、高尾山の標高は599 mですので、文字上ではこのコメントは正しいです。ただ、このコメントの裏には、八丈富士と三原山は「登るのは簡単な山」という評価が見え隠れします。
しかし、八丈島の八丈富士と三原山は、本当に簡単な山でしょうか?
今日は、「八丈島の登山事故防止についての話し合いに参加してきました」と題してのお話です。
八丈島の登山事故防止のための会議
会場に行きますと、当日集まっていましたのは、八丈島の警察署、消防、産業、観光、自然ガイドと、事故防止・救助・広報・フィールド活動とすべてを網羅する方々が集っていました。
今回は、登山の現状報告、事故の報告、救助の報告、土砂崩れなどの災害と議題が進みました。
登山事故の例
もちろん、どの方々も事故を求めて山に入るわけではありません。ですが、心がけ、判断、装備、準備で、結果は大きく変わります。
ここ数年間、八丈島で記録された登山事故はあるのでしょうか?答えは、
あります
事故は大きく分けて2種類ありました。いずれも八丈富士でおきました。
八丈富士お鉢回り中の転落事故
八丈富士のお鉢回り中に起きた噴火口側への転落事故。八丈富士に登った方でしたら、どれだけ恐ろしい事故か想像できるかと思います。
このケースは、奇跡的に助かりました
ただ、実際の救助のお話を伺って、救助成功は本当に奇跡的であったことが説明されました。
ドローンと聞けば、カメラが付いたリモコンの小型ヘリというのは誰もが知っていますね。この救助でも登場したそうです。
ドローンは、転落して動けなくなった方がいた場所のすぐそばまで行ったそうです。しかし、結果は何も分からずじまい。
理由は、落ちた方は、運悪くブッシュの下にいて、完全に見えなかったからでした
そして、ドローンは、バッテリーを交換して繰り返し飛行したものの、探索時間の限界が来てしまいました。
結局、最後は、人の目が決め手となり、遭難者は発見されたそうです。
八丈富士火口内での遭難
八丈富士火口内での遭難は複数件起きました
初めに、八丈富士火口内は携帯の電波が届きません。
八丈富士は浅間神社があります。お鉢回りと同じくらい人気があります。
ところが、最近、道を外れる方が増えているようです。そして、霧で迷い、遭難するケースが増えています。
八丈富士の火口には池があるのですが、本来そこへは行ってはいけません。
理由は2つあります。自然保護と遭難防止のためです。
今回は遭難についてお話します。ご存知の通り、八丈島は海底噴火から出来た島です。
溶岩の塊ですね。固まった溶岩は土のように均一ではなく、大小様々な穴が形成されています。
そうしますと、一見、平らに見える地面も踏み抜いて、場合によってはひねって骨折します。
ですので、火口は、晴れで見通しが良くても、とても危険な場所です。
火口内は、お鉢回りコースからは簡単に見えます。しかし、実際に降りると、似たような形の枝が多く、入り組んでいて、知っている人と一緒に行かないと確実に迷います。
さらに、八丈富士の火口には小穴があります。小穴は絶壁です。迷えば転落が待っています。
加えて濃霧が待ち構えています。動かなければ帰れません。でも、動けば地面を踏み抜いて骨折か小穴への転落が待っています。
報告された救助された方々は、お鉢回りをしている方々に大きな声で救助要請をしました。これは正しい判断です。
それはそれでいいのですが、もう少しさかのぼって、入ってはいけない火口内に入らなければ、遭難もなく楽しい登山となりました。
八丈島の山の標高は低いのですが、登山を始める前にその危険性を再確認しなければなりません。
登山届の提出
今回の集まりでは、登山届についても話し合われました。
みなさんも、ざまざまな媒体で登山届というのを聞いたことがありますね。
登山届って、何のためにするのですか?
行って帰ってくるだけだから、出さなくてもいいと思うのですが・・・
この登山届、事故が起きたときに、真価を発揮します
登山計画が明確ならば、救助要請されてから探索・発見・救助までの時間が圧倒的に短くなります。時間が短ければ短いほど、軽症、重症、命に関わる事故のいずれも救われる確率が上がります。
では、八丈島ではどうすればいいのですか?
八丈島では、下記のように登山届を出すようになっています。万が一の事故のときに、登山届は威力を発揮しますので、かならず提出してくださいね。
八丈島の登山道・林道などの不規則な土砂崩れ
土砂崩れは、八丈島に来てすぐに登山される方々にはとても予想にくい事象です。前日までに、山での具体的な降水量を知るのは難しいからです。
過去には八丈富士登山道も大きな土砂崩れがありました
もちろん、大雨の後も危険なのですが、昨年の10月1日八丈島を直撃した台風16号の通過以降、八丈島に住んでいても予想外の場所・時間差で、晴れていても土砂崩れが起きるようになりました。
最近ですと、こん沢林道で土砂崩れが起きました。
土砂崩れ現場は、写真の奥の見えない曲がり角で起きたそうです
林道での散策は勧められませんね
このようなことが起きていますので、雨が絡んでいるときは、登山届と同時に、ガイドさんに相談したほうがいいと思います。
限られた時間でしたが、警察署、消防、産業、観光、自然ガイドに関わる方々と貴重なお話を伺うことが出来ました。特に、今回の主題である登山事故の発生には傾向があり、遭難者の救助の大変さを生の情報で聞くことが出来ました。
八丈島の八丈富士と三原山は標高が低い山かも知れません。しかし、八丈島は、溶岩でできている島、霧が発生しやすい島であることを忘れてはならず、軽く見ることで簡単に遭難しまいます。
みなさんも、八丈島の山を登る際は、適切な心がけ、判断、装備、準備をし、そして、登山届を忘れずに提出してくださいね。
追記
2022年4月25日、こん沢林道の通行止めは解除になりました。