ヤンバルトサカヤスデの集まり方を観察しました

動物

先日、Yahoo!Japanでヤンバルトサカヤスデの大発生の記事がトップに掲載されました。それに関連してだと思いますが、私のブログにもお困りの多くの方々からのアクセスがありました。

私は、現役の研究者時代、ヤンバルトサカヤスデには大変お世話になりました。1種の生物から3報の論文を発表することができました。

Just a moment...
A sacrificial millipede altruistically protects its swarm using a drone blood enzyme, mandelonitrile oxidase - Scientific Reports
Soldiers of some eusocial insects exhibit an altruistic self-destructive defense behavior in emergency situations when a...
Just a moment...

論文執筆のコストパフォーマンスの高い生物でしたね

そんな論文よりも、ヤスデをなんとかして欲しいんですけれども・・・

確かに、そうですね

それでは、今回も八丈島で観察した結果をみなさんに提供します


今日は、「ヤンバルトサカヤスデの集まり方を観察しました」と題してのお話です。


注意:今日は、ヤンバルトサカヤスデの写真を掲載します。ですが、できるだけ小さく撮ったもののみです。

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ヤンバルトサカヤスデが家屋に入ってくる

ヤンバルトサカヤスデの行動を観察すると、大群で山の上からふもとへ降りてくるのが分かります。この大群が曲者で、ありとあらゆる隙間に入り込もうとします。

これは、ヤスデがピンポイントに隙間を狙ってくるのではなく、元々ヤスデのもっている行動の性質の結果です。

みなさん、ご存じの通り、私たちの家屋は完全には密閉していません。ヤンバルトサカヤスデが大群で隙間に入り込まれたら、最後はどうしても家屋の中に入ってしまいます。

そうなんですよ

本当に困っています

私の専門は、分子生物学や生物化学でしたが、ヤスデを研究していました。そんな関係で、ある場所のヤスデ対策をお願いされました。

家屋の周辺を色々調べ、最終的に家屋内の1ヶ所に集中することが分かりました。でも、どこから家屋に入ってくるのかは分かりません。


タイムラプス撮影による家屋への侵入口の特定

夕方に広角レンズをデジタル一眼レフカメラにつけて、三脚にセットし、一晩タイムラプス撮影をしました。

翌日、撮れた写真を1枚1枚整理すると、ヤスデが侵入する瞬間を捉えていました。

EOS 6D+EF16-35mm F4L IS USM

赤丸に囲まれているのがヤンバルトサカヤスデです。ドアとドアの間の隙間から入ってきました。

依頼された方も、ヤスデが入らないように、対策としてドアの下の部分に簡易テープで保護しました(ドアの下の部分の黒いテープ)。でも、残念ながら、意味をなしていないことも分かりました。

養生テープによる目止め実験

家屋の内側に養生テープ貼る場合と、外側に貼る場合の両方を試しました。

内側に養生テープを貼った場合

ドアには厚みがありますね。そのため、厚みの分だけ、ドアの下の部分にヤスデがたくさん入って来ることが分かりました。

外側に養生テープを貼った場合

iPhone 8

今度は、ヤスデは外側に集まりました。調べてみると、屋内には入っていませんでした。

しかし、ただ養生テープを貼るだけではヤスデの侵入を防げません。写真をよ〜くみて下さい。

ドアの左右と中心のつなぎ目に縦に養生テープが見えると思います。始めに左右と中心の縦3本養生テープを貼り、そのあと横一線に養生テープを貼りました。

一見、一本のテープで間に合うように見えますが、そのように貼ると、どうしても左右の角や中心の部分に小さな隙間が生まれます。ヤスデはここを通ることができます。

これは一例です。でも、考え方はいっしょですので、みなさま、色々お試し下さい。


ヤンバルトサカヤスデの集まり方をタイムラプス撮影しました

このブログを読んでいただいている方々は、ヤスデには耐性はありませんね。ですので、そのものズバリの写真は掲載しませんが、ヤンバルトサカヤスデは夜に大群で移動し、朝になるとコンクリートの壁などに大きな集団を形成します。

フェロモンが原因

コンクリートに含まれるカルシウムが原因

とか色々いわれています。ですが、もし、フェロモンが原因でしたら、フェロモン源に対して同心円状に集まりますし、フィールドを歩く人なら知っていますが、ヤスデはコンクリートのみではなく、木の幹にも集まります。

いずれも科学的な根拠はありません。

調査の一環で、ヤスデが集合を作る過程を撮影できました。

EOS 6D+EF16-35mm F4L IS USM

時間は上左、上中、上右、下左、下中、下右の順で経過しています。赤丸のところに集合ができます。

  1. 上左:ヤスデはいません。
  2. 上中:天井でヤスデがランダムで這っているのがわかりますね。赤丸の中の左の個体が止まりました。
  3. 上右:止まった個体に次の個体が接します。
  4. 下左:2頭はそのままです。
  5. 下中:3頭目が2頭のグループに近づきます。
  6. 下右:3頭目が2頭のグループに合流します。

ヤスデが集まる機構は

  1. はじめの個体が何らかの凹凸で止まります。
  2. 次の個体が止まった個体と接し、歩くのをやめます。
  3. その連続で集団ができます。

ただそれだけです。

え゛〜

嘘みたい

嘘みたいなホントの話です

コンクリートの壁で集まるのも、基本これと一緒です

ヤスデが意図的に集まったように見えますが、結果的にただ集まっただけです


養生テープや家屋の壁をつるつるにする塗装以外の対策は大掛かりになります

例外もありますが、ヤンバルトサカヤスデが来やすい家と来にくい家は、図のような傾向があります。

上の家はヤスデの群れに直撃してしまいます。一方、下の家は道の法面にあるコンクリートの壁がヤスデの進行の障壁となって、直撃が緩和されます。

これに加えて、コンクリートの法面で過去の私のようにヤスデを毎日集める人がいたら、ヤスデ対策は完璧です(笑)。


私は、どうやったら安く簡単に水入りのバケツにヤンバルトサカヤスデの大群を誘導できるかを、いつも考えています。残念ながら(みなさんは幸運です(笑)。)、今年の八丈島はヤスデの数が少なく、実験はできていません。

来年のシーズンに実験ができることを楽しみにしています

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