ヤンバルトサカヤスデの季節になりました ―その生態と対策についてー

生活

八丈島は漁業、農業、釣り、ダイビング、登山などのレクリエーション、そして、観光の島です。お客様はいつでもWelcomeです。

ところが、秋から冬の初めにかけて、海外から来島した招かれざるお客さんに八丈島は困らされています。


今日は、「ヤンバルトサカヤスデの季節になりました ーその生態と対策についてー」と題してのお話です。


ちなみに、ヤンバルトサカヤスデの写真を掲載すると、ブログを間髪入れずに閉じられてしまいますので、ヤスデの写真は使いませんでした(笑)。

ヤスデは明るいところは嫌いですので、多くのお客様は気づかないかも知れません。今日は、島民対象のお話になります。


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ヤンバルトサカヤスデはどこから来て、どうして広がったの?

ヤンバルトサカヤスデは台湾原産の外来生物です。そして、日本では1983年に沖縄島に侵入が確認されました。そして、鹿児島県、飛んで徳島県、静岡県、埼玉県、神奈川県、伊豆諸島へ広がりました。八丈島は2002年に確認されました。

少し難しい話になります。ヤンバルトサカヤスデしかもっていないヒドロキシニトリルリアーゼChuaHNLをコードするcDNAの塩基配列を、鹿児島県、静岡県、東京都八丈町のサンプル間で比較しました。

長い年月をかけて広がると、DNAの塩基配列は変異しますので、少しずつ異なるようになります。ところが、実験の結果は完全一致でした。

以前から、島民の方々は「生息域の広がり方から人の活動(土の移動)が原因ではないか?」といわれていました。それはDNAの塩基配列レベルの実験から、ヤスデは短期間で沖縄島から八丈島に来たと推定されたので、島民の方々の考えが支持されたことになります。

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ヤンバルトサカヤスデに対する天敵はいるの?

残念ですが、いません。

チョウの幼虫は葉を食べますので、お腹の中は葉でいっぱいですね。ですので、野菜いっぱいの餌として野鳥は食べます。

ところが、ヤスデは枯れ葉を食べます。お腹は枯れ葉でいっぱいです。

枯れ葉を食べる動物はいませんよね(ツチボタルの仲間は例外です。)。

さらに、ヤスデの体内には(R)-マンデロニトリルという化合物が貯蔵されています。ヤスデは危険を察知すると、(R)-マンデロニトリルとその分解産物のシアン化水素を防御物質として放出します。

シアン化水素は呼吸毒ですので、全ての生物に対して有害です。

ですので、ヤスデは無敵の生物です。これについては、下記の論文で発表しています。

Just a moment...

天敵ではありませんが、ヤスデが大発生した土の上でヤスデを飼育すると、高確率で死ぬことを私は確認しています。おそらく、ヤスデを死にいたらしめる菌がその土壌に増えて、それにやられたのではないかと思っています。

研究者を引退しましたが、可能でしたら続けたいテーマの1つでした。ちなみに八丈島は大雨で菌が流されてしまうので、この菌によるヤスデの駆除はできません。


ヤスデを殺す薬はあるの?

もちろん、ヤスデの殺す薬はあります。ですが、あの大群を駆除できるでしょうか?

島民の方々はご存知ですが・・・、無理ですよね(笑)。


ヤスデは八丈島のどこから来るの?

結論からいいますと、山です。

ヤスデは、出身の台湾の状況と同じで、山のスギ林を中心に生息します。そして、あふれると原生林にも生息域を拡大します。

1-5齢の時期は小さいです。6齢で大きくなり、7齢で終齢に達し、移動が始まります。

なぜヤスデは同調して移動できるかというと、私は気温が原因と思っています。

今は、八丈島では秋から初冬の時期ですね。気温はどのように下がるでしょうか?

山の地図のしましまの等高線を思い出してください。今の時期、上へ行くと気温は寒く、下に行くと暖かくなりますね。

地理院地図 / GSI Maps|国土地理院
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ですので、この等高線と同じ様にヤスデのベストの温度帯が存在するわけです。その温度帯が、季節が冬に近づくにつれて、山の上から降りてきます。

ヤスデはその温度帯の移動といっしょに山から降りてくるということです。

フェロモンによるものと考えている学者さんもいらっしゃいますが、私の仮説の方がヤスデの生態にマッチしていると思います。

ヤンバルトサカヤスデが家へ入らないようにするには

ヤスデは、今のところ駆除はできません。そうなると、最低でも家に入らないようにするという対策をとるくらいでしょうか。

以前、ある方からヤスデの家屋への進入の対策をお願いされました。私がやった対策は以下です。。

  1. ヤスデが建物周辺のどこから来るのかを調べました。
  2. 可能性のあるところに無人カメラを設置して、タイムラプス撮影でヤスデの侵入口を特定しました。
  3. 侵入口を特定できましたので、侵入口を養生テープで塞ぎました。
  4. 翌日、養生テープの外側のヤスデの塊をほうきで集め、水の入ったバケツに入れて殺しました。
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ここで重要なのは、養生テープを侵入口の建物の外側に貼ることです。そうしますと、建物の外側でヤスデが止まります。

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ヤスデは生物ですので、水が必要です。でも、水が多すぎると溺死します。

ですので、一般家庭レベルの場合は、ほうきで集めた後(シアン化水素を放出するので、一度に大量のヤスデは扱わないで下さい。)、水の入ったバケツに入れれば、簡単にヤスデを殺せます。死んだらそのまま土へ還してあげましょう。

防御物質の(R)-マンデロニトリルは分解しやすい化合物です。ですので、ヤスデが溺死している間に違う物質になります。

私のやりかたと似たような「つるつるのテープ」を使った方法は、今から5年前の2015年の全国科学映像祭の優秀作品賞を受賞した、八丈町三原中学校サイエンス部様の研究で既に報告されています。

また、2019年でも、鹿児島県立錦江高等学校様も同様の研究で発表されていました。


当面は、家屋の侵入阻止ですが、いつかはそれよりも離れた場所でのヤスデ侵入の防御ができればと思っています。私の対策だけではまだまだ完璧ではありませんので、島民による創意工夫が、今後、色々出るといいですね。

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