ヤンバルトサカヤスデ対策 ―天敵による対策はできる?また、その他の作戦について―

生活

今年も、ヤンバルトサカヤスデがちらほらと出てきましたね。先日、八丈島のある建物のヤンバルトサカヤスデ対策をお願いされました。

今年も養生テープ作戦です。

翌日はヤスデが建物に全く入りませんでした。対策は完璧でした。


今日は、「ヤンバルトサカヤスデ対策 ―天敵による対策はできる?また、その他の作戦について―」と題してのお話です。


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八丈島にはアリがたくさん住んでいる

八丈島にはアリがたくさん住んでいます。色々な種類のアリが記録されていますね。

家屋の周辺だけでなく、八丈富士や三原山だけでなく、海周辺までアリは生息しています。

彼らが集団でヤスデを襲うと想像したら、部屋に入ってくるアリも応援したくなるかもしれません。


ヤンバルトサカヤスデの天敵は?

残念ながら、以前のブログにも書きましたが、ヤンバルトサカヤスデは、防御物質として(R)-マンデロニトリルを体内に貯蔵しています。そして、それを分解して猛毒のシアン化水素(青酸ガス)を発生させることができます。

シアン化水素は呼吸毒ですので、全ての生物に対して有害です。ですので、天敵(ヤンバルトサカヤスデを食べる生物)は、日本にはいないと思います。


ヤンバルトサカヤスデの防御システム

ヤスデの体をよく見るとの体の側面にトゲトゲがついています。このトゲトゲの中には袋が入っていて、その中に防御物質の(R)-マンデロニトリルが入っています。

ヤスデをいたずらするとくるくるっと丸くなりますね

これはヤスデの防御態勢です

くるくるっと丸まるとき、全身の筋肉が収縮します。このとき血圧が上がり、それに押されて、袋の中の防御物質が体の外に出ます。


ヤンバルトサカヤスデとアリが同じ箱に入っていたらどうなるか?

実は、研究者時代に私は、ヤンバルトサカヤスデを飼育していました。研究材料として、生きた個体が必要だったからです。

ヤンバルトサカヤスデの一生は1年くらいといわれています。確かに、終齢の7齢で交尾をすると、そのあとすぐに死にます。でも、交尾をしないと約1年半生きることを確認しています。

ずっとヤスデを飼っていると、どこからともなくアリが住み着くようになります。ヤスデは貴重な実験材料でしたので、アリがヤスデをいつ襲うか心配になっていました。

結局どうなったかといいますと、共存でした(笑)。同じ飼育箱に入っていても、ヤスデもアリもお互いに我関せずでした。


アリがヤンバルトサカヤスデを襲う時

でも、厳密には違いますが、アリがヤスデを襲うことはありました。どういう時に襲うかといいますと、それはヤスデが弱ったときや死んだ直後のときです。

先ほど、ヤスデの防御態勢をお話しました。防御物質を体の外に出すためには、全身の筋収縮が鍵です。

しかし、ヤスデは、弱ったときや死んだ直後は筋収縮ができません。この状態のときは、防御物質は出ません。

このとき、アリはヤスデを大勢で襲っていました。防御物質さえでなければ、怖くないからです。

ヤスデを食べる生き物といえば、アメリカ合衆国に生息するツチボタルの仲間が報告されています。

Just a moment...

この昆虫、ヤスデに筋肉弛緩剤らしき物質を注入し、くた〜っとさせて、防御態勢になることを防ぎます。そのあとは、防御物質が入った袋を傷つけずに、頭から体の中身をきれいに食べます。

かしこい戦略ですね

このような昆虫は稀です。残念ながら、この種は八丈島には住んでいません。


ヤンバルトサカヤスデを捕りすぎたらどうなるか

私が以前所属していた国家プロジェクトでは、九州でヤスデを集めていました。

毎年、ヤスデを根こそぎ集め続けるとどうなると思いますか?

もしかして、いなくなる・・・のですか?

正解です

これは、化学生態学分野で笑い話としてよくいわれていることです。研究者が研究のために自身の手で害虫を集めることが、駆除には1番効果があるということです。

研究者は、サンプルが欲しいのに、捕りすぎていなくなってしまうのです。

ヤスデのプロジェクトでも同じようなことが起きてしまい、ヤスデを探して、車で走り回ったのはいい思い出です。そして、駆除らしい駆除もしていないのに、地元の方々に感謝されて複雑な気分でした(笑)。


不妊虫放飼による駆除

現在では、ヤスデの積極的な駆除は薬剤に頼るしかありません。しかし、山全体への散布は難しいので、薬剤による駆除はほぼ不可能です。

せいぜい、私のようにヤスデの侵入場所を特定して、養生テープを使って、侵入を防ぐ、受動的な対策しかできません。

では、外来昆虫(ヤスデは昆虫ではありませんが・・・。)が入ってきたら、そのまま指をくわえて見てるだけでいいのでしょうか?先人はそうではありませんでした。

有名なのは沖縄諸島に生息していた害虫のウリミバエに対する策です。ウリミバエを大量飼育、放射線で不妊化、放虫を繰り返すことで、ウリミバエの根絶に成功しています。実は、これは、日本の応用昆虫学研究で世界に誇る大成果でした。

総額170億円とお金がかかりすぎて、八丈島では現実味はありませんが、このような事業を行えば科学的にはヤスデの根絶は可能です。


当面のヤスデ対策は、養生テープ作戦で家屋へのヤンバルトサカヤスデの侵入を防ぎ、早朝に集めて溺死あるいはビニール袋に入れてヤスデ自身のシアン化水素で自殺させる、の繰り返しでしょう。

これをずっと続ければ、理論上ヤスデはいなくなります

あるいは、将来、沖縄のケースように巨額な予算がついて不妊虫放飼によるヤスデの駆除が可能になる時代が来るかも知れません。

私としては、低予算の工夫が好きなので、

八丈島発の新しいヤスデ対策が生まれたらなぁ・・・

と思っています。みなさん、今年はヤスデ対策を色々試してみてはいかがでしょうか?

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