私はこれまでアシジロヒラフシアリ対策で連戦連勝でした。ところが、今年は侵入を許してしまいました。
あれっ!?
今まで一度もこんなことなかったのに・・・
アシジロヒラフシアリの行動を観察しますと今まで見たことないくらい、狂ったような大群の行列を作っていました。
でも、なぜ大群のアシジロヒラフシアリが来てしまったのでしょうか・・・?
今日は、「2024年の東京都八丈島、毒入り餌を撒いたのに大群のアシジロヒラフシアリが家に入ってきていませんか?」と題してのお話です。
私の専門分野
研究者は8年前に引退しましたが、初めに私の専門分野について書きます。
私の研究者としての業績はこちらで見ることができます。もうしわけございませんが、日本語の論文はほとんど書いたことがありませんので、すべて英語です。
そのページの「Skills and expertise(専門技術と知識)」の項目の中に「Chemical Ecology(化学生態学)」というものがあります。
化学生態学というのは、情報伝達物質(フェロモンなどの化学物質)と生き物の行動解発の関係を明らかにする学問です。
アリの行動はみちしるべフェロモンによって制御されています。そう、アシジロヒラフシアリを家に入れないような対策は、化学生態学分野で私の専門なのです。
アシジロヒラフシアリの大群がどこから来ているかを調べてみると・・・
アリは生き物です。自然発生はしません。
そこで、侵入されたところから逆をたどってみました。そうしますと、アシジロヒラフシアリの大群が集まって死んでいました。
これは何かといいますと、八丈町で現在防除試験をしている毒入り餌です。ここから狂ったようにアシジロヒラフシアリの大群が来ていました。
毒入り餌なのになぜ大群のアシジロヒラフシアリが来てしまったのか?
昨年試験した毒入り餌と今年試験した毒入り餌は組成が違います。殺虫成分は前者はチアメトキサム(ネオニコチノイド系殺虫剤。)、後者はピリプロール(フェニルピラゾール系殺虫剤、ノミやマダニなどの節足動物に対する殺虫効果あり。)です。
両者の殺虫成分の濃度は0.001%と0.01%と安全に配慮して希釈されています。その濃度でもアシジロヒラフシアリを殺します。
みなさんも毒入り餌の効果はすでにご確認されていますね。ですので、安全性もアシジロヒラフシアリを殺す効果も問題はないと思っています。
私が住むアパートに限ってのお話になります。
昨年は私の部屋の近くでは毒入り餌は使用していませんでした(対照区)。そして、今年は使っていました(実験区)。
毒入り餌には糖分が含まれています。これをアリが食べてしまいますと、もちろん最終的には死んでしまいますが、その前に大きな仕事をします。
おしりからみちしるべフェロモンを出し、仲間を呼び寄せます
そして、みちしるべフェルモンは餌の量が多ければ多いほど大量に放出されます。
大群が来たのはこれが原因か・・・
殺虫成分は未来永劫残るわけではありません。効果がなくなりますと、大量のみちしるべフェロモンだけが残ります。
アシジロヒラフシアリのみちしるべフェロモンは安定な化合物のようです
私は八丈島で7年間アシジロヒラフシアリの行動を見てきました。アシジロヒラフシアリは前年と同じ場所を歩きます。
多くの化合物は分解され、機能を失います。ところが、放出されてから1年間、太陽光、夏の暑い日々、冬の寒い日々にさらされても、アシジロヒラフシアリは翌年ちゃんとその道を歩くことから、アシジロヒラフシアリのみちしるべフェロモンは安定な化合物のようです。
どうやったら大群のアシジロヒラフシアリを回避できるか?
答えは分かっています。このようにやれば来なくなります。
簡単に方法を説明しますと下記でアシジロヒラフシアリの侵入を防ぐことができます。
- 家の周りはスプレーあるいは水で希釈した洗剤でアシジロヒラフシアリを殺し、みちしるべフェロモンの放出を最小限にします。
- フィールドから家に向かうアリの行列を突き止め、行列の道に分けて毒入り餌を置きます。
目的は、アシジロヒラフシアリの駆除ではありません。
そもそも、アシジロヒラフシアリは八丈島全体に生息しています。八丈島の全島民に毒入り餌を配布してもアリの本体はフィールドにいるので、すべてのアリの駆除はできません。
わたしたちができることは、アリのみちしるべフェロモンの放出を妨げ、わたしたちの家に来ないようにすることです。
つまり、人とアシジロヒラフシアリとの棲み分けをします
今日は、「2024年の東京都八丈島、毒入り餌を撒いたのに大群のアシジロヒラフシアリが家に入ってきていませんか?」と題してのお話でした。
毒入り餌はアシジロヒラフシアリに対する殺虫効果があります。これは間違いありません。
ただ、この毒入り餌をどう使うかでアリの大群が家に来るか来ないかが決まります。
本来、アシジロヒラフシアリはフィールドで花の蜜を食べて生活しています。屋根はありますし、餌もあるので、どうしても彼らはわたしたちの家に来たいようです。
家の周辺はスプレーで、毒入り餌はフィールド‐家間のアリの道に使いますと、効果的に棲み分けできます。
EOS 6D Mark II+70mm F2.8 DG MACRO Art
明日のブログの更新はお休みします。
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