前回のブログでは、私の視点から台風22号が八丈島を通過した状況を紹介しました。文字や図ではその時の状況を的確に表現はできませんでしたが、私の人生の中でも一番の勢力の強い台風でした。
台風22号が去り、風が徐々に弱くなり始め、外に出られるようになりました。既に停電していました。
得られる情報は防災無線と携帯からのみ。しかし、安全の範囲で集められるのであれば、自分で情報を得るのも大切なことです。
台風22号によって影響を受けた私の周辺の変化を見ることにしました。
今日は、「2025年10月9日、台風22号が去った直後の東京都八丈島の私の散歩コースの様子」と題してのお話です。
散歩コースを調べてみました
私は左足首を骨折する前は、身近な野鳥や植物のデータを集めるために散歩をしていました。あくまで散歩が中心ですので、持つのは携帯のみです。
たくさんの倒木が見られました
道はたくさんの生葉で覆われていました。台風22号の風によって枝から無理やり引き離され、空中に舞ったことが分かります。
しかし、その葉はまだ優しい方でした。右を見ても左を見ても倒木が起きており、地面から引き剥がされ、根が剥き出しになっていた大木もありました。

赤丸で囲まれているのが剥き出しになった根
倒木ですので、方向は人間が望んだようには倒れません。道路にもたくさんの倒木が発生していました。
車での移動は不可能でした。これは何を意味するかと言いますと、要請を出しても緊急車両はすぐには向かうことができないということです。
八丈島9年目ですので、私も何度か八丈島の台風を経験しました。もちろん、倒木も見ています。
しかし、ほとんどの道で倒木が発生するのを見たのは初めてでした。「経験したことのない」の言葉通りでした。



損傷した木々
木は平面に描きますと、団扇のような形で描きますね。木の幹、枝は団扇の骨、葉は団扇の紙の部分です。
当たり前ですが、木が本当に団扇の形ですと風で飛ばされてしまいます。実際には枝と枝、葉と葉の間には風が通る隙間がたくさんあります。
強風が吹いてもいなして損傷しにくい構造になっています。
ところが、台風22号の通過後、ありとあらゆる木に損傷が見られました。少し歩いただけでも、風上の枝が折れただけでなく吹き飛ばされた個体、上部をもがれた個体、頑張って耐えても根本から幹を折られた個体が確認されました。



赤丸で囲まれている部分が幹から折れている箇所
目を疑った地形の大きな変化
私がなぜこの道を散歩に選んでいるかと言いますと、低山ですが、山野の緑色がとても綺麗だからです。
また、私は野鳥の止まる木をいつもマークしており、写真は撮りませんが、野鳥の基礎的な行動を学ぶ場として常日頃から使っています。
いつもの散歩道のはずでした。しかし、目の前の色が全く異なることに気が付きました。

斜面がいつもの緑色から茶色になっていました
斜面の木々が根こそぎ地面から外され、茶色い地肌が見えていました。
近づきますと、土砂崩れに巻き込まれる可能性がありました。ですので、写真を撮影したこの橋より前には進まず、回れ右して帰りました。

2025年10月12日、浅沼造園様のXで注意喚起が出ました。近づかなくて正解でしたし、安全のため、このあたりへは行けなくなりました。
限られた斜面のみの土砂崩れの不思議
八丈町は、このエリアの土砂災害ハザードマップ1三根①を公開しています。
広範囲に崩れた場所は、近くですが一致していません。実際には、土砂災害警戒区域(イエローゾーン)近くの南西側の斜面です。

赤四角で囲まれた場所が土砂崩れが起きた場所
台風22号の最接近は、昨日のブログで紹介したように気圧の変化から2025年10月9日6:00と分かっています。
この瞬間、雨は92 mm/h(2025年10月8日~2025年10月9日6:00の総雨量は334.5 mm)、風速は32.3 m/s(5:30に最大瞬間風速54.7 m/s)、そして、風向は北北東ないし北東となっていました。
国土地理院の地図から斜面の底辺と高さを得て、斜面は下記のリンクより計算しますと、

斜面の角度は約60˚でした。
- 八丈島の地形は溶岩の上に薄い土がのっていること
- 大雨で地面が柔らかくなっていること
- 斜面に対してほぼ垂直に強風が吹いたこと
により、風速30-50 m/sの強風が斜面60˚の崖を一気に吹き上げ、木々が地面から浮き上がるように剥がされ、一斉に崩れ落ちたのかも知れません。
私は災害科学の専門家ではありません。いつか、この斜面の土砂崩れのメカニズムを解明し、得られた知見を他の土地での災害対策に使われるかも知れません。

台風通過直後に不用意に被災場所に近づかない理由
この記事を書いているのは2025年10月12日です。明らかになった被災が毎日増えています。
その中で私が思うことを書きます。
台風に限らず、八丈島では大雨の直後は山に入らないのが鉄則です。土砂崩れが起きるからです。
また、しばらく経っても時間差で崩れ落ちることもあります。
不用意に近づいて土砂崩れに巻き込まれましたら、どうなるでしょうか?
1人の遭難者を救助するためには、1人では足りません。複数で救助し、さらに医者から看護師まで医療関係者の助け、場合によってはヘリで運ばれるかも知れません。
私が気が付かないだけで、もっと多くの人が必要かも知れません。
今の八丈島は復旧で人や機械のリソースは限られており、他に回すのはとても難しいです。
興味は持つのは分かりますが、一呼吸おいて未来の状況を頭の中で想像し、不用意な遭難者にならないように努めてください。
災害の状況などは、1975年の「八丈島台風13号災害の記録 東京都八丈町」のような報告書で後に発表されるはずです。野次馬になるのではなく、記録や写真などは報告書で確認しましょう。
当事者や復旧活動の関係者を除いて、その他の私たちは不用意に災害現場に近づかず、作業の邪魔をしないようにすることで復旧の協力をしましょう。
今日は、「2025年10月9日、台風22号が去った直後の東京都八丈島の私の散歩コースの様子」と題してのお話でした。
台風22号が去った、私の散歩の定番コースの状況について紹介しました。
道路は倒木、木々は損傷していました。また、広大な斜面には土砂崩れが見られ、今回の台風22号の恐ろしさを私の視点から解説しました。
土砂崩れのメカニズムは、おそらく、災害科学の専門家の先生が解明してくださると思います。
それから、不用意に被災場所に近づかない理由について私が思うことを書きました。