八丈島では、近年小さなアリの大群が家の中に入ってきます。

アシジロヒラフシアリと言います
たかが、アリと馬鹿にしますと大変なことになります。家屋の壁の中に入りますと、電線の被覆に沿って歩き、最終的にコンセントで感電死し、ボヤに繋がります。
私はこれまで、適正量の殺虫剤を使うことにより、アシジロヒラフシアリとの棲み分けを成功してきました。

2026年現在では、八丈町から試験用にアシジロヒラフシアリの駆除剤が配布されています。この駆除剤は、Sunamura et al. (2022) Pest. Manag. Sci.の論文を基に、改良されたものです。

確かに効きます
ただ、気づいたことがありました。

今日は、「八丈町から配布されているアシジロヒラフシアリの薬の含有組成を改良していただけないでしょうか?」と題してのお話です。
アシジロヒラフシアリ駆除剤散布場所周辺の違和感
私は八丈島の自然に興味があり、日頃から色々なものを楽しまさせていただいています。私自身は、元研究者のためか、感情を排除して常にフラットに色々なものを観察しています。
その中で、不思議な光景を見ました。

アシジロヒラフシアリ駆除剤散布場所にかなりの数のコウチュウの死骸があったのです
ざっと観察しますと、6頭のハチジョウコクワガタのメスと1頭のオオシマツヤハナムグリの死骸がありました。一方、1頭の生きたハチジョウコクワガタのオスも歩いていました。

あれ!?
アシジロヒラフシアリの駆除剤の割に、目的外の昆虫が死に過ぎでは・・・?

白点線がアシジロヒラフシアリ駆除剤の散布場所、赤丸がハチジョウコクワガタメスの死骸、赤点線がハチジョウコクワガタの生きたオス、青丸がオオシマツヤハナムグリの死骸。
アシジロヒラフシアリ駆除剤は確かに効果的にアリを殺していました
ハチジョウコクワガタのメス周辺を注意深く観察してみました。そうしますと、アシジロヒラフシアリは確かに死んでいました。
写真では12頭のアシジロヒラフシアリの死骸が確認できました。

赤丸がハチジョウコクワガタのメスの死骸、黒丸がアシジロヒラフシアリの死骸。
生きたハチジョウコクワガタのオスの面白い行動
上述で1頭のハチジョウコクワガタの生きたオスが見られました。このオスの動きをさらに観察しました。

そうしますとススススッと何かに惹かれて歩いていたのです。その行き先はメスの死骸でした。
コウチュウには様々なフェロモンがあります。メスの腹部のフェロモン腺から揮発性の高いフェロモンを出す種もあれば、外骨格にフェロモンが蓄積する種もあります。
後者の場合は、メスの生死は関係なく、オスを引き寄せることができます。
私は生態は詳しくありませんが、私の観察が正しければ、ハチジョウコクワガタのフェロモンはメスの外骨格に蓄積するものかも知れません。

メスの死骸に接しているハチジョウコクワガタのオス
アシジロヒラフシアリ駆除剤の殺虫成分について
Sunamura et al. (2022) Pest. Manag. Sci.の論文で使用された殺虫成分はチアメトキサムです。ネオニコチノイド系の殺虫成分で高い殺虫能力がある一方、ハチ目昆虫、特にミツバチにはかなりの悪影響を与えることが知られています。
そのため、論文では他の昆虫を殺さないように、チアメトキサムは0.001%ととても少ない含有率を採用していました。

八丈町から配布された初期のアシジロヒラフシアリ駆除剤は、この論文を踏襲したものでした。
当時、興味深い報告が住民の方から出ていました。

駆除剤を撒くと、クワガタが死ぬよ~
当時、私も観察していました。ただ、死骸の数が少なかったので、アシジロヒラフシアリ駆除剤との因果関係を結論するのは難しいと思っていました。
でも、今思えば、とても重要なご意見でした。
現在、八丈町から配布されているアシジロヒラフシアリ駆除剤にはチアメトキサムに代わりピリプロールが殺虫成分として含まれています。ピリプロールは、遅効性のため運ばれた後に殺虫効果が出ます。


アシジロヒラフシアリにはぴったりな殺虫成分ですね
でも、私が観察した場所ではさすがにハチジョウコクワガタが死にすぎです。成分を見ますと、ピリプロールは0.004%含まれていました。
薬剤では殺虫効果をLD50(Leathal Dose 50: 50%の致死量)で評価します。ピリプロールのアシジロヒラフシアリに対するLD50、ハチジョウコクワガタに対するLD50は体の重さから異なると思われます。
ハチジョウコクワガタはアシジロヒラフシアリよりも大きい体ですので、調整すれば、ハチジョウコクワガタは生き、アシジロヒラフシアリは死ぬ量は決められると思います。
ハチジョウコクワガタはコクワガタの八丈島固有亜種と言われています。他の昆虫種に影響を与えず、ヒトとアシジロヒラフシアリとの効果的な棲み分けのために、駆除剤の殺虫成分であるピリプロールは0.004%よりも濃度を下げた方が良いように思えます。

ハチジョウコクワガタのメスに対する素朴な疑問
アシジロヒラフシアリ駆除剤の効果から始まった観察ですが、1つ疑問があります。
私が観察した場所では、なぜかハチジョウコクワガタのメスが集まり、死んでいます。
ハチジョウコクワガタは飛ぶことができます。でも、オスより前にメスがどういう理由で特異的に集まったのでしょうか・・・?
光、匂い、あるいは色々な組み合わせ・・・。

測定機器がありましたら実験したいですね

今日は、「八丈町から配布されているアシジロヒラフシアリの薬の含有組成を改良していただけないでしょうか?」と題してのお話でした。
私が観察したアシジロヒラフシアリ駆除剤の効果、偶然見つけたハチジョウコクワガタの死骸、そして、アシジロヒラフシアリ駆除剤のピリプロールの濃度についてのお話でした。
個人的な観察から、他の昆虫種に影響を与えないために、八丈町から配布されているアシジロヒラフシアリ駆除剤に含まれるピリプロールの濃度はもう少し下げた方がよろしいかと思います。
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