私は八丈島に来るまでは、研究者でした。現役時代、よく、「研究は仮説が大切」という言葉を耳にしました。
これは、一般の方々も聴いたことがあると思います。
仮説を立てるのが難しいです。ですので、これは、研究活動が崇高なものと思われる所以かも知れませんね。
では、勉強の出来なかった私はどうしていたかといいますと、実は、仮説は立てたことがありませんでした。
考え得る可能性を片っ端からやって、レアな結果を先に得て、論文を書くときに、答えの分かっているカッコいい「仮説」を書いていました。
それって、チートじゃないですか!?
全くそのとおりですね
文章で読むと、どれだけ賢いかアピールしていますが、実際は、何も考えずに、ただ手を動かしていただけでした(笑)
私は、研究者は引退しましたが、野鳥写真を撮影する際、似たようなことをしています。
今日は、「野鳥の水浴び場における仮説と結果について」と題してのお話です。
野鳥の水浴び場を見つける
私は、以前、野鳥の水浴び場を見つけました。散策している途中、突然、重そうに飛び出すイイジマムシクイを見つけました。
その瞬間に、近くに水浴び場があると思いました
探してみますと、確かに、そこには水がありました。しかし、あまりにも微妙過ぎて、本当に水浴び場かどうか断定は、出来ませんでした。
私が鳥だったら、ここかなぁ・・・?
と、曖昧ですが、なんとなく見えましたので、取り敢えず、そこにトレイルカメラを仕掛けました。
結果は、自分の一部の仮説が当たり、様々の生き物も利用しているという予想外の結果を得ました。
新しい野鳥の水浴び場を見つける
前回の水浴び場はとても安定していました。4年前に見つけましたが、今でも野鳥が水浴びに来ます。
ところが、場所が過酷過ぎて、トレイルカメラを1台仕掛けるのが精一杯でした
野鳥の水浴びの写真を撮るために4年間ずっと探していたのですが、
ここっ!
と思えるものがどうしても見つけられませんでした。
ところが、散策路を歩いていますと、また、野鳥が飛び出してきました。その場所は、以前から知っていたのですが、水浴び場所の正確な特定が、難しい場所でした。
仕方がありません。何も考えずに、トレイルカメラを端から順番に仕掛けて、結果を見ていきました。
最初は、前回と全く同じような場所に仕掛けました。
私が野鳥ならば、必ず使うと確信ていたからでした
ところが、結果はといいますと、テスト撮影以外は、何も写っていませんでした。
研究者は、これまでの経験を重視し、ときどき、それを不変と決めつけることがあります。
今回の私もそうですし、過去にもそういうときがありました
しかし、トレイルカメラを回収する瞬間、野鳥が、私の予想の場所と全然違うところから、飛び出してきました。たまたまなのか、それとも、私の足音から移動したのか、理由は分かりません。
でも、飛び出した地点は結果です。ならば、自身の仮説は無視して、結果重視で、予想外の場所にトレイルカメラを仕掛けました。
結果は、オーストンヤマガラとアカコッコが写っていました
トレイルカメラは、これらのオーストンヤマガラ、アカコッコ以外にも、シチトウメジロ、イイジマムシクイも写していました。
正直、私は、今でもこの結果が信じられません。この水浴び場は、不安定で、かつ野鳥にとっては危険な場所にあったからです。
しかし、4種の野鳥が水浴びをしていました。私の仮説が間違いであることは確定しました。
そう、私がいつも論文で書いていたように、実験結果から、それっぽい理由を書くはめになったのです。
私が求めるものは、当たり前ですが、誰も知りません。本にも、インターネットにも、論文にも、どこにも書かれてありません。
自分で見つけるしかないのです
ただ、自分で見つけたことは、答えの分かっている研究風の実験結果とは、比べものにならないくらいの燃えるような喜びを与えてくれます。
この喜びを一度知ってしまいますと、答えの分かっている研究風の実験では、自分の欲求を満たせなくなってしまいます。
そんなわけで、私はフィールドで自分の知らない何かをいつも探しています
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